目からウロコの The 美肌道

第5話 古い角質の古い思い出

 

忘れられない角質ケア

 

 これはすごい…。角質ケアのサロンを後にしながら心底驚いていました。角質ケアが美肌にとっていちばんの方法であるということは、十代の頃から気づいていました。しかし、酵素洗顔やスクラブ洗顔、ピーリングなどいくつか試したものの、どれもお肌にダメージを与えると感じて続けることができませんでした。問題はいかにあの難しい、微妙な古い角質を取るかということなのです。そういった意味でも、あのサロンにはこれまで体験した美容法の中で突出した効果と確実性があったのです。

 雑誌編集者としては、なんとかこのすごさを伝えたいと思うのですが、施術内容はあまりにもシンプルで地味な印象でさえありました。紙面で伝えるには限界を感じます。それでも取材を申し込んでなんとかしたい! と思いましたが、編集部ではスキンケアの大きな特集を終えたばかり。タイミングが合いません。

 もったいない!! このまま余所の出版社に先を越されるのは悔しい! と思いつつその週末を送ったのでした。

 そして、またいつもの月曜日が始まり、いつものお仕事の日々が始まりました。頭の中にはまだまだあのサロン体験が鮮やかに渦巻いています。そんな日の夜、社内で別の女性誌編集部に所属する友人と一緒に夕食をとることになりました。当然、彼女にサロン体験を熱く語ったところ…「そんなにすごいって感じたのなら間違いないと思うから取材を申し込むね。ちょうどスキンケアの特集で取材先を探していたから」ということになり、とんとん拍子で取材、掲載が実現され、サロンの評価も高かったようでした。それから時が経ち、担当も変わって自ら取材する機会は逃したものの、あの強烈な角質層ケア体験を忘れることはできませんでした。

 

小学生のときに憧れた“お風呂で角質ケア”

 

 時は流れ、いつしか個人的にサロンへ通いたいと考えるようになっていました。あの角質ケアなら確実に今よりもきれいになれると確信がありましたし、長期間に渡って継続するとどのような結果が得られるのか気になります。しかし、当時は残念ながら定期的にサロンへ通うだけの時間を作ることはできませんでした。

 そんなある日、あることを思い出しました。

 まだ小学生だった頃、某化粧品メーカーの入浴剤のCMで、若いモデルさんが湯船に浸かりながら楽しそうに歌を唄いつつ、手で顔を軽くマッサージするという映像がよく放映されていました。ゆったりと湯船に浸かり、身体が温まった頃に手で優しく顔を撫でるとツルツルお肌になりますというもので、入浴タイムを美容タイムに、と提案する内容だったと思います。

 素敵なお姉さんがお風呂で美容タイムを楽しむ姿は、面倒なお風呂がスペシャルな時間になるようで、小学生女子だった私のハートはわしづかみされたのでした。しかし、お肌のケアはまだ早いな、と感じましたから、それはもう少し大きくなってからのお楽しみプランとして心に仕舞い込まれていたのです。

 

女子中学生の鋭い突っ込み

 

 中学2年生のあるとき、あのお風呂のCMを思い出し、いよいよ時が来たと思い立ちました。

 さっそく湯船で身体が十分に温まるのを見計らってから、そのCMの歌を口ずさみながら、見よう見真似でそっと顔を撫でるようにマッサージしてみました。すると洗顔後であるのにもかかわらずもろもろと垢が取れてくるのです。身体が温まり、肌がほぐれるとこんなに!? と驚いたものです。

 その日のお風呂上りはいつもより顔が色白になり、ツルツルときれいになっているみたいでした。

 次の日の朝、登校すると普段あまり話したことのない同級生の女子が駆け寄って来て「あれ? 今日はいつもよりきれい、どうして?」と言ってきました。 むむ? 鋭い反応かも。これは本当に効いたのかなと思いました。それから1週間おいてまたお風呂マッサージをしてみると、またもや翌朝、学校で先日の女子とは別の交流のない女子が駆け寄って来て「あれ? どうして今日はいつもよりかわいいの?」と言うのです。

 効いてる! 

 それからは週に数回、肌の調子を見ながら湯船で顔のマッサージをするようになりました。これを23歳くらいまではコンスタントに続けていたのです。

 まだ子供でしたが、これはどんなお化粧品をつけるよりも肌をきれいにする方法に違いないと確信していました。あの時の確信は間違っていなかったのです! それに気づかせてくれたのが角質ケアのサロンでした。

 

お風呂の角質ケアには年齢制限がある

 

 では、なぜそんなに簡単で良いお風呂でのマッサージを止めてしまったのかと思われるでしょう。

 それにはこんな理由があります。10代の頃、お風呂でのマッサージで面白いくらいにもろもろと取れていた垢が、大人になるに従って徐々に取れなくなっていったのです。それはゆるやかな変化で、最初にいつもと違うと感じたのは23歳の頃でした。今思えば、ちょうどお肌の新陳代謝が低下し始める年齢です。このときはまだ、あれ? ちょっと垢が取りずらくなったかも? という程度でしたが、27歳になるとその変化は決定的なものになったのです。

 それからは湯船でのマッサージがお肌の負担になると感じ、1~2カ月に1回くらいに頻度を落とし、29歳くらいにはもうほとんどお風呂でのマッサージはできなくなっていたのです。そんなことも手伝って二十歳くらいから酵素洗顔に手を出したり、スクラブなども試しましたが、お肌が痛む感覚があったのですぐに止めました。今にして思えばナイス判断、自分、といったところです。

 こうしていつしかお風呂での角質マッサージから離れていきましたが、数年を経て角質ケアの施術を受け、同じ原理だと気づきました。

 角質ケアは垢抜け肌を実現し、目に見えるきれいを提供してくれますが、実際にはとても難しいものです。まだ中学生の新陳代謝力が高い頃でさえ、ちょっと欲張ってマッサージをすればすぐに肌が赤くヒリヒリと痛んだのですから、新陳代謝力が低下してからのケアはもっと難易度が上がるのは当然です。

 あの角質ケアのサロンでたった1回の施術を受けただけでクマが薄くなったということは画期的なことだったのです。

 なにしろ効果テキメンでありながら、肌ストレスはまったく感じなかったのですから!