目からウロコの The 美肌道

第2話 銀座に顔を洗うだけの洗顔サロン!?

 

ファンデ テクがないなら、ファンデーションいらずの美肌を目指しましょ

 

 美肌づくりに定評のあるヘア&メイクアップアーティストの方が読者モデルの肌を完璧と言える程に作り上げたのを見て以来、美肌の本当の価値を思い知らされたわけですが、通常、プロのヘア&メイクアップアーティストのような肌づくりを真似ることはかなり難しいことですし、それを毎日の日常メイクでできるのかと考えれば、ほぼ不可能と言えます。

 それならファンデ テク不要の素肌美を目指せばいいじゃない! というのが私の結論。これならメイクテクはいらないし、なによりもとのお肌がきれいだということの価値は計り知れません。

 では、素肌美を目指すにはどうすればいいのか? となりますが、よし! これだ!というヒントが記憶の引き出しから取り出されたのです。


記憶の引き出し--恐ろしく不毛な会話

 

 それはいつも時間に終われて仕事をしていた、某女性誌で美容ページを担当していたときのことです。当時一緒に仕事をしていた後輩がいつになくお願いモードでこう言ってきました。

「何度か仕事でかかわった広告代理店の方が新しい美容サロンの広報を担当していて、美容担当のチーフに体験に来てもらえないかという話があるのですけど。是非行ってみていただきたいのですが」    

 当時、まるで一分の隙間もないと言わんばかりの形相で働いていた状況で、余計なスケジュールを入れる気などないことを知っていた彼女は遠慮気味に、しかし、いつになく強く押してきたのです。何か余程の義理でもあるのかしらんと思いつつ「どこにあるの?」と聞いてみました。

「銀座です! 駅からもすごく近いですよ」

「ふーん、確かに会社から近いわね」

「そうなんです! 近いんです!」

「で、どんなサロンなの?」

「えーと、洗顔をするサロンらしいです」

「それで?」

「……それだけです」

「え? 洗顔って、まさか顔を洗うだけってこと?」

「そ、そうです」

「それだけ?」

「…そうらしいです!」

「顔を洗うためだけのサロンをわざわざ銀座にオープンしたの?」

「そうらしいです!」

「そんなの聞いたことないけど?」

「私もです!」

「……なんじゃ、そりゃ!?」

 

お宝アンテナがピン!

 

 なんて不毛な会話! しかし、よくよく考えてみると引っかかるものがあります。

銀座に洗顔だけをするサロンって…エステティックサロン流行りのこのご時勢に…どこのサロンも独自の施術と雰囲気とサービスで競い合っているのに…顔を洗うだけ…あり得ない…それでお商売は成立するのだろうか?…でも、銀座に出店ということはそれだけの実績がすでにあるということ? お金持ちの税金対策か道楽か何か?…それともとてつもないチャレンジャーで無鉄砲な体当たり新参サロンだったりして…。

ぐるぐると思考がルーレットのように巡り巡って、小さな赤い玉がカラリとマス目に落ちるように、面白い! ときました。

 滅多にない、いい感じかも! 

 そんなにもシンプルでスタンダードな手法で直球勝負しているサロンをこの目で確かめてみたい!!! という思いがむくむくと湧きあがってきたのです。

 「じゃあ、そのサロンへ行ってみます」

 くるりと向き直り、いきなり真顔で応じる私に、後輩はぎょっとしつつも気が変わらないうちにと、すぐにサロンの体験日を手配してくれたのでした。

 

休日返上でいざリサーチへ! ところが…

 

 体験日は休日を返上してのスケジュール調整になってしまいました。もし、結果が空振りでもがっかりしないように、その日、銀座で何か予定を立てておこうと友人に連絡しましたが急過ぎて誰も捕まらず、まあ、久しぶりに銀座の百貨店巡りをゆっくりできる機会なのだと自分に言い聞かせつつ出かけたことを覚えています。

 当日、サロンを訪ねると、まず、広告代理店の女性がにこやかに迎えてくれました。このあとサロンのオーナー兼エステティシアン的な女性が登場して施術をしてくれるのかと思いきや、サロンの奥へ進むと、そこにはがっしりとした年配の男性が「いらっしゃいませ」と硬い表情で迎えるのでした。

 その男性の脇を固める女性スタッフたちもなぜか皆硬い面持ちです。

 あれ? エステティックサロンならではのあの華やかな感じの笑顔と、いらっしゃいませ~がないような…ま、いいか。気のせいかも。などと思いつつ早速施術チェアに座り、エプロンとヘアバンドをつけてもらいリクライニングに身を任せました。

洗顔だけで銀座にサロン…洗顔だけで銀座にサロン…しかもおじさん…がっしり系…ぐるぐると駆け巡る思いをこれから始まる施術への期待と、この目で確かめてやる! という気合に変換しながらゆっくりと目を閉じたのでした(ちょっと大袈裟!?)